A.山頂エリア
幾度となく繰り返された噴火によって形成された大地の歴史
浅間火山の地形・活動史
浅間火山の活動史は、大きく黒斑火山、仏岩火山、前掛火山の3つに分けられている。 黒斑火山は10万年前以降に活動をはじめ、円錐形の高度2,800mから2,900mの聖そうか算を形成した。 仏岩火山は、浅間火山の活動の中で最も噴出量が多く、大規模な火砕流を噴出した。 1万年以降に噴出した前掛け火山は最も新しく、1783年に噴出した鬼押出し溶岩流の痕跡を今でも鮮明に見ることができる。
黒斑火山と前掛火山とでは山体表面の浸食谷の形成など、地形に大きな違いができている。 黒斑火山の山体崩壊は、大きな山でも急激に形が変わるような火山活動があることを教えてくれるが、 さらに、千年・万年単位の時間が経過すると、流水の働きで山も徐々にその携帯を買える、大地の変化を物語っている。
動植物の特徴
古い黒斑火山の馬蹄形の外輪山と、まだ活動中の前掛火山周辺とでは植生に大きな違いがみられる。 黒斑火山の外側斜面は、尾根まで森林となっており、山麓から標高差により変化する山地帯から亜高山帯への植物の垂直分布が見られる。 しかし、前掛火山の斜面等は、繰り返される火山活動の影響を受け、特異なものとなっている。裸地から地衣類やコメススキ、オンタデなどが侵入し、 さらにガンコウラン、クロマメノキ、ミネズオウ群落などがカーペット状に拡がり、徐々に高木が侵入するなど、 火山高原から遷移する多様な植物群落が見られる。 さらに、山頂エリアは、高山植物の種類数の多さに加え、高山蝶や野鳥観察のメッカとしても知られている。
A.山頂エリアーサイト紹介ー
A-1.千トン岩
近年の浅間山噴火によって放出された噴石(岩塊)は、前掛山及び釜山 周辺 に無 数に散在する。 1m を超える岩塊は、傾斜の緩くなった場所や凹地、鞍部に集中して いるが、山体の斜面や隣接する黒斑山の尾根沿いにも大小のクレーターや噴石を確 認することができる。 その中でも「千トン岩」は、 1950( 昭和 25) 年 9 月 23 日の噴火で噴出された巨大な火 山岩塊で、最近の噴火で噴出されたもののうち、現存する最大のものとされている。 その大きさから地元では「千トン岩」と呼ばれるが、実際には 2 3 千トンはあるものと 推定されており、火山噴火のエネルギーの大きさを感じることができる。
A-2.トーミの頭
浅間山の中で最初に形成された黒斑山が山体崩壊してできた凹地を「湯の平」と 呼ぶ。砂礫地にカラマツの幼樹が疎らに生えた平地で、四方の眺めが開けており、こ の付近に黒斑山の火口があったと考えられている。「湯の平」では黒斑山の火山活動 による堆積物がよく観察でき、黒斑山生長の過程を知ることができるとともに、東側の前掛山、西南西の剣ヶ峰、 南の牙山の絶景に囲まれて南北に走る登山道では南と北で様相の異なる植生を歩きながら観察することができる貴重な場所である。 また、この地には日本で最初の火山観測所があった。現在は噴火に伴う山火事で 焼失し見学することはできないが、国内の火山防災の先駆けとして子供たち や来訪者に、その役割を伝えていくことは極めて重要な意味を持つものである。
A-3.シラハゲ
群馬県側裾野から浅間山をのぞむと、黒斑山の東側に白色の崩壊斜面が見える。 地域では、この部分を「シラハゲ」と呼んでいる。位置は、黒斑火山の崩壊カルデラ東端 の鋸岳北斜面に当たり、最大幅約 200m 、 標高 1,850 2,000m の範囲である。この部 分は上部を前掛火山の降下火砕物に覆われ、下部は層厚 10m を超える仏岩火山の 嬬恋軽石に覆われている。いずれも降下堆積物であるため固結しておらず、崩落が 絶えない。従って、パイオニア植物も侵入できず、淡黄色軽石層がむき出しの状態に なっている。
A-4.トーミ断層
「トーミ断層」は、浅間火山の中でも地表で確認できる最も大きな断層であり、それ が現在の登山道から見られる地形の 1 つとなっている点で、火山活動に伴って巨大な 断層が形成される噴火のエネルギーの大きさを体感できる重要なサイトである。
ビジターセンター.高峰ビジターセンター
鹿沢インフォメーションセンターは上信越高原国立公園の中にある 公園案内・展示施設(ビジターセンター)である。 ここでは鹿沢周辺の自然や歴史・文化についての展示・解説、散策ルートの案内などを行っているほか、 四季を通じてボランティアスタッフによる自然観察会などの各種イベントが開催されている。 周辺には2つの自然学習歩道・多様な高原の花を観察できる野草園・小さな湿原・屋外トイレなどが整備されている。