百体観音

旧長野県東部町(現長野県東御市)から峠を越えて旧鹿沢温泉までの山道約12km(100丁)は 「湯道」と呼ばれ、一番から百番までの「丁石」と呼ばれる百体の観音像が、1丁(約110m)ごとに道脇に安置されている。 この百体観音は、旅の安全を願う道標として「地蔵峠道しるべ観音」とも呼ばれ、この観音像を頼りに大勢の湯治客が 霊湯で名高い鹿沢温泉へ通った。 造立された百体観音は、聖観音や千手観音をはじめとした“六観音”で、衆生を地獄や餓鬼などの迷界から救済すると 言う有り難い観音菩薩たちであった。一番・如意輪観音は、旧長野県東部町新張村(現長野県東御市新張)にあり、 県境の標高1,733mの地蔵峠に八十番・十一面観音があり、鹿沢温泉の紅葉館脇に百番・千手観音がある。 この百番の観音像は一番と共に最も豪華で、千手観音・半肉立像、仏体の身長は128cmで、台座からの総高は242cm、 他の百体のように石材は安山岩で、台座は六角、円形等4重で、特に蓮華座の花弁の大きな浮き彫りが力に満ちている。 台座には「願主湯本中」とあるため、寄進者は鹿沢の人達だが、台座の他の面に世話人として新張村の8名の名がある。 この世話人という表現から新張の人々が石材の運搬、礎石の工事等の奉仕をしたものであろうと推察されている。 石仏は一体一体大きさも形も違い、10番ごとに大きく造られている。嬬恋地内にある観音像は八十番から百番である。